前回の記事では、全形牙でも、加工品でも象牙を仕入れた古物業者の義務である記載台帳に関してお話しさせて頂きました。
本日は、全形牙を仕入れる際の注意点や義務である所有者変更についてお話ししたいと思います。
目次
象牙の全形牙は登録票が必須
まず第一に、象牙の全形牙は、登録票がなければ一切の取引はできません。
買取であろうと、無償譲渡であろうと、交換であろうと、認められていません。
また所有者以外の者が、登録証の取得を代行することも認められていません。
基本的には所有者が登録票を取得をする必要があります。
例外として登録票が必要となった1995年以前に購入した全形牙を所有者の遺品として発見した場合などは、資産を受け継いだ家族が取得することはできます。
取得にあたり、所有者や本数、サイズなどだけではなく、購入した時期や誰から受け取ったのかなど、細かい記入が必要となります。象牙を購入した際の領収書などの関係書類があるのか?ないのか?など現状によって受ける案内が変わってしまいます。
正しい案内が必要になってきますので、古物業者で何かしらの判断はせずに、自然環境研究センターへ電話されるように伝えてください。
象牙購入に関する確認先 一般財団法人 自然環境研究センター
一般財団法人 自然環境研究センター
〒130-8606 東京都墨田区江東橋3丁目3番7号
TEL:03-6659-6310
http://www.jwrc.or.jp/service/cites/regist/kikan/zouge1.htm
こちらの自然環境研究センターで、登録票のない象牙の登録を行うことができます。
無登録の全形牙の所有者さんには、こちらの施設を紹介してあげてください。
全形牙の取り扱い意外に、3つの重要な注意点
上記で説明した、登録証がない全形牙の取り扱い以外に、3点ほど重要な注意点があります。
全形牙と登録票は一緒に受け取ること
当日に全形牙、後日に登録票を受け取ることなどはできません。
加工された牙状の形であっても登録票は必要になります。
例えば画像の様に象牙を半分に切り、半分より細くなる先が残っている象牙も登録票は必要になる可能性があります。反対側の太い方は、必要ない可能性が高いです。実際に自然環境研究センターに問い合わせたところ、「国際的にも多くの加工製品があり、一律的に伝え難く、買取をされる前にお問い合わせしてください。」との事でした。また自然環境研究センターも管理元である環境省から同様な内容で聞いている為、必要に応じて環境省に確認を取っているそうです。
象牙の真贋について
登録票の発行に基づき、事前に象牙の鑑定を行い本物であることを確認する必要があります。自然環境研究センターのお勧めとしては、象牙専門店か、博物館での鑑定になりますが、古物業者が鑑定を行うことも認められています。その際に鑑定書の発行も必要ありません。
万が一、所有者が偽物の象牙を登録申請をしてしまった場合、種の保存法第58条に基づき、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が所有者に課せられる場合があります。必ずしも鑑定を行えるスタッフが鑑定を行うか、所有者へ博物館などでの鑑定を行うように伝えましょう。
全形牙となると買取金額及び、売上金額も高額になると思いますが、国際的な基準として象牙の取り扱いは制限をされているので、取り扱う際には十分に注意してください。
登録票のある象牙を買い取った後に必要となる手続きとは?
続いて登録票のある象牙を買い取った後に必要となる手続きに関してのお話です。
登録票を必要とする象牙は買取を行った日より、30日以内に所有者の変更を行わなければなりません。
譲受けに等による所有者変更の届出を行うのは、
1.書面による届出書の提出
2.インターネットによる届出書の提出
の2種類の方法があります。
書面による届出書の提出
記入する用紙は1枚のみになり、こちらがその届出書の記入例です。
書類右上の年月日
届出書を提出する日付を記入してください。
譲渡受け又は引き取りをした年月日
そのままの日付を記入してください。
届出者
特定国際種事業届出で届けた名称や住所を記入します。また象牙の会社内で複数の事業届出を行っている場合、象牙の保管・管理を行っている部署が届出者に該当します。
法人の場合、氏名には名称と代表者の両方を記入します。
[本社で買取を行い、本社で管理をする場合]
事業届出をした本社の住所、電話番号、会社名と代表取締役名を記入します。印鑑は会社の代表印又は、代表取締役の印鑑のどちらかを押印します。
[支店で買取を行い、本社で管理をする場合]
事業届出をした本社の住所、電話番号、会社名と代表取締役名を記入します。印鑑は会社の代表印又は、代表取締役の印鑑のどちらかを押印します。
[支店で買取を行い、支店で管理をする場合]
事業届出をした支店の住所、電話番号、営業所名(店舗名)と営業所責任者名(店長)を記入します。印鑑は会社の代表印又は、営業所責任者の印鑑のどちらかを押印します。
[本社で買取を行い、支店で管理をする場合]
事業届出をした支店の住所、電話番号、営業所名(店舗名)と営業所責任者名(店長)を記入します。印鑑は会社の代表印又は、営業所責任者の印鑑のどちらかを押印します。
注意点としては、象牙と登録票は管理を行う部署(届出住所)で保管を行わなければなりません。
登録記号番号・登録済みの個体等に係る動植物の種名・登録済みの個体等の詳細な区分
登録票に記載された事項をそのまま記入してください。
譲渡し者又は引渡し者の氏名
全所有者の名前を記入してください。
書類は郵送にて提出を行いますが、不備がなく正常に処理された場合には、自然環境研究センターからの連絡はありません。不備があった場合のみ、連絡がありますので、提出から1週間-2週間ほど連絡がなければ、正常に処理されたと判断しても大丈夫です。
インターネットによる届出書の提出
こちらのURLより自然環境研究センターの登録ページへ行けます。
https://kokusaikishoushu.jwrc.or.jp/todoketop.do
届出受付のページから、名義変更の「譲受け等届出」をクリックします。
続いて象牙やサイ角、毛皮製品の届出の「譲受け等届出(器官)」をクリックします。
最後に警告文確認のチェックを入れ、メールアドレスを打ち込み、「申込み」をクリックします。
登録したメールアドレスへ案内メールが届き、そちらから入力フォームに打ち込み流れとなります。
記入内容は書面と全く同じになりますので、詳しくは上記の記入方法をご参照ください。
インターネット届出の場合、あまりにも古い象牙だと、登録が反映されていない場合があるそうです。
エラーになってしまった場合は、書面での届出書の提出をする形になります。
書面であろうと、インターネットでの提出であろうと、数分~10分程度で届出書は書き終えれます。
30日以内だからといい後回しにはせず、少しでも早めに確実に手続きをするようにしましょう。
所有者を変更した後に、国内再販をすると思いますが、法人であろうと、個人であろうと新しい所有者も同様の手続きを行う必要があります。
象牙に関する記事のまとめ
の3記事を通し、古物業者が象牙を取り扱うための届出、象牙を買取後の台帳管理、全形牙の所有者変更、買取ルールなどをご説明してきました。
2018年6月1日(予定)頃から、現在の届け出制から登録制に変更予定
記事①でもご説明した通り、2018年6月1日(予定)頃から、現在の届け出制から登録制に変わります。
現在は無料でできる届出も、登録制になる事で登録免許税が9万円が必要になるなど、改正されてしまいます。
こういった背景もあり、登録制に変わって以降に象牙を取り扱う業者のハードルも高くなります。市場規模は格段に大きくなるとは考えにくいですが、限られた業者に絞られるのも事実です。正しい取り扱いを行えば、元々資産として考えられていたほどの品物です。今後に象牙の取り扱いも視野に入れている古物業者さんは、今のうちに届出を行うことを強くお勧めします。
施行にあたり罰則なども変更予定
施行にあたり罰則なども見直されました。
違法行為が確認された場合の登録の取消し、登録の更新時に環境省の審査を受けることなどが義務付けられました。
今まで届出を行っていない業者の取引があった場合は、50万円以下の罰金でした。
改正後は、個人の場合で5年以下の懲役または500万円以下の罰金、
法人の場合は、1億円以下の罰金になりました。
日本国内だけではなく、国際的にも象牙の違法取引を根絶させるため、罰則がかなり厳しくなりました。
自分で判断せず迷った場合は確認をしてください
登録票がいるのか?いらないのか?
記載台帳の記入方法など..
何かしら迷った場合は、自身だけで判断はせずに必ず自然環境研究センターか、環境省、経済産業省に確認をするようにしてください。
登録票の必要な象牙に関してのお問い合わせ先
・登録票のない象牙を登録してもらう時
・登録票の必要な象牙の所有者変更を行う時
・登録票の必要なのかを確認する時
など登録票の必要な象牙に関しては、一般財団法人 自然環境研究センターに確認をしてください。
一般財団法人 自然環境研究センター
〒130-8606 東京都墨田区江東橋3丁目3番7号
TEL:03-6659-6310
http://www.jwrc.or.jp/index.htm
法律や管理に関してのお問い合わせ先
・種の保存法など法律に関して
・記載台帳の書き方に関して
・特定国際種事業届出書の提出をする時
など法律や管理に関しては、経済産業省等に確認をしてください。
経済産業省
北海道経済産業局 地域経済部 製造産業課
〒060-0808
北海道札幌市北区北8条西2-1-1
(電話:011-709-1784)
管轄:北海道
東北経済産業局 地域経済部 情報・製造産業課
〒980-8403
仙台市青葉区本町3-3-1
(電話:022-221-4903)
管轄:青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県
関東経済産業局 産業部 国際課
〒330-9715
さいたま市中央区新都心1-1
(電話:048-600-0261)
管轄:茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県、静岡県
中部経済産業局 産業部 製造産業課
〒460-8510
名古屋市中区三の丸2-5-2
(電話:052-951-2724)
管轄:富山県、石川県、岐阜県、 愛知県、三重県
近畿経済産業局 産業部 製造産業課
〒540-8535
大阪市中央区大手前1-5-44
(電話:06-6966-6022)
管轄:福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、 和歌山県
中国済産産業局 地域済産部 地域済産課
〒730-8531
(電話082-224-5684)
広島市中区上八丁堀6-30
管轄:鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県
中国経済産業局 地域経済部 製造産業課
〒760-8512
高松市サンポート3-33
(電話:087-811-8520)
管轄:徳島県、香川県、愛媛県、 高知県
九州経済産業局 地域経済部 製造産業課
〒812-8546
福岡市博多区博多駅東2-11-1
(電話:092-482-5445)
管轄:福岡県、佐賀県、長崎県、 熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県
内閣府沖縄総合事務局 経済産業部 地域経済課
〒900-0006
那覇市おもろまち2-1-1
(電話:098-866-1730)
管轄:沖縄県
各都道府県の管轄経済産業局にお問い合わせください。環境省に問い合わせるケースは稀だと思いますが、必要な場合は各窓口からの案内があると思います。
以上が象牙の一連の流れになります。
慣れるまでは手続きが多く手間に感じることも多いと思いますが、慣れてしまえば負担もさほど大きくはありません。
今後により幅広くお取り扱いができることも、古物商業者にとっての強みになると思います。
古物商業者の情報ならコブちゃんを参考にしてみてください!