古物商をお持ちの方であれば、象牙の価値がかなり高いのもご存知かと思います。全形牙であればKgあたり8,000円~60,000円ほどで取引される業者さんが多いのではないでしょうか。
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ワシントン条約締結以降の象牙は輸出入禁止
絶滅の危機に瀕する野生動植物が過度な国際取引に利用されることのないようにするために、1989年のワシントン条約(CITES)締結以降の象牙は輸出入が禁止されています。その為、今日本にある象牙の流通量は大きく変動する事は基本的には考えられません。(例外として自然死した政府が管理する象牙などの貿易はその場限りで国貿易間で行われた事はあります。)
ワシントン条約以前に取引されていた象牙の全形牙や加工品を資産として所有されている方も多く、金額の高い象牙類は取り扱いたいと思っている業者も多い事でしょう。
象牙・ウミガメ科の亀の甲羅は特定国際種事業届出書の提出が必要
しかし象牙やウミガメ科の亀の甲羅は古物商の許可だけでは取扱う事はできません。古物商は各都道府県の公安委員会への申請が必要になりますが、象牙類は、経済産業省へ象牙やウミガメ科の亀の甲羅を取り扱う業者としての『特定国際種事業届出書』(種の保存法に基づく届出)を提出が必要になります。
特定国際種事業届出書は1日でも早く届出書の提出を!
本日は届出書の提出方法をご紹介したいと思いますが、登録に際して1日でも早い届出書の提出をお勧めします。
2018年6月1日(予定)頃から登録制に変更
何故なら、2018年6月1日(予定)頃から、現在の届け出制から登録制に変わるからです。
今では無料で届け出を行う事ができ、基本的に問題がなければ許可証を頂けます。
しかし6月以降は登録制になる事で、登録免許税が9万円必要になります。
また許可も業者毎に通る業者と通らない業者が出てしまうとの事です。
もちろん2018年6月1日(予定)以前に許可が下りている業者は、登録制に変更になった際の登録免許税は免除され、無償で確実に切り替える事ができます。こうした観点もあり、できるだけ早い申請をお勧めします。
特定国際種事業届出書の記入方法
さてここからは『特定国際種事業届出書』の記入方法についてお話ししたいと思います。
こちらが『特定国際種事業届出書』になります。
続いてこちらが記入例になります。
注意点が何点かありますので、
実際に記入される際に下記をご参照ください。
記入の注意点
- 1.特定国際種事業届出書は2部作成し、2部ともを提出をします。
- 2.営業所毎に提出の必要があり、営業所が2箇所にある場合であれば、計4部作成する必要があります。
- 3.特定国採取事業の対象とする特定器官等の種別
- ・ぞう科の牙及びその加工品 (全形牙と加工品を取扱う場合)
- ・ぞう科の牙の加工品 (アクセサリーや麻雀牌など加工品のみを取扱う場合)
- ・うみがめ科の甲 (全形を甲羅やカットピースを取扱う場合)
ぞう科の牙及びその加工品とうみがめ科の甲の双方を取扱う場合には、各届出書が必要になり、2部x2部(x営業所)の枚数が必要となります。
- 4.譲渡し又は引渡しの業務を開始しようとする日
古物商業者は、買取であっても無料引取であっても届け出は必要になります。基本的には1週間から10日ほどで届け出は完了します。提出時期などにもより経済産業省の担当課の処理期間が前後してしまう可能性がありますので、予め担当課へ事前に相談をし、確実な日付を記入されることをお勧めします。 - 5.特定器官等の在庫量
古物商業者は、届け出前に売買などを一切行ってはならずこちらは「なし」になります。万が一、届け出前に事業を行っていたのであれば、無許可営業となり5年は申請ができないなど業的処分の可能性が高くなりますので、ご注意ください。
※今現在としては営業所毎の申請が必要になりますが、2018年6月(予定)以降からは、会社単位での申請に変更になるとの事です。
※改正内容全てが確定的に決まっている訳ではなく、今後も修正や変更などの可能性はあります。
各都道府県の提出場所・相談窓口
提出時、各都道府県によって提出場所が変わります。同様に記入内容である、開始日時の部分や、相談窓口も変わります。
下記に都道府県毎のお問い合わせ窓口を記載しておきますので、ご参考にして見てください。
北海道経済産業局 地域経済部 製造産業課
〒060-0808 北海道札幌市北区北8条西2-1-1
電話:011-709-1784
管轄:北海道
東北経済産業局 地域経済部 情報・製造産業課
〒980-8403 仙台市青葉区本町3-3-1
電話:022-221-4903
管轄:青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県
関東経済産業局 産業部 国際課
〒330-9715 さいたま市中央区新都心1-1
電話:048-600-0261
管轄:茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県、静岡県
中部経済産業局 産業部 製造産業課
〒460-8510 名古屋市中区三の丸2-5-2
電話:052-951-2724
管轄:富山県、石川県、岐阜県、 愛知県、三重県
近畿経済産業局 産業部 製造産業課
〒540-8535 大阪市中央区大手前1-5-44
電話:06-6966-6022
管轄:福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、 和歌山県
中国済産産業局 地域済産部 地域済産課
〒730-8531 広島市中区上八丁堀6-30
電話:082-224-5684
管轄:鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県
中国経済産業局 地域経済部 製造産業課
〒760-8512 高松市サンポート3-33
電話:087-811-8520
管轄:徳島県、香川県、愛媛県、 高知県
九州経済産業局 地域経済部 製造産業課
〒812-8546 福岡市博多区博多駅東2-11-1
電話:092-482-5445
管轄:福岡県、佐賀県、長崎県、 熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県
内閣府沖縄総合事務局 経済産業部 地域経済課
〒900-0006 那覇市おもろまち2-1-1
電話:098-866-1730
管轄:沖縄県
※小売事業者の管轄経済局になります。
象牙の製造、卸売、鼈甲製造は、経済産業省本省の管轄になります。
経済産業省 製造産業局 紙業服飾品課
〒100-8901 東京都千代田区霞が関1丁目3番1号
電話:03-3501-1089
特定国際種事業を行う事業者の義務
続いて、特定国際種事業を行う事業者は3点の義務が課せられます。
特定国際種事業届出の提出
こちらは上記の書類を提出し、事業者としての申請が必要だという内容になっています。
ここで注意が必要なのは買取であろうと、金銭の絡まない無償譲渡であっても特定国際種事業届出の提出は必須である事です。
取引記録(記載台帳)の記載と保存
台帳の保管義務は5年です。また環境大臣または経済産業大臣に求めに応じて提出がある可能性があります。
取引台帳自体は、古物商で使用している台帳とは別に必要になります。
基本的に指定の台帳はありませんが、経済産業省が作成し用意されている台帳を用いる事をお勧めします。
また台帳の記載は、種別番号や重量表記など細かい部分が多く、詳しい記載方法に関しましては、次回の記事でご説明したいと思います。
環境省及び経済産業省による立入検査の受け入れ
環境省及び経済産業省が、施設内への立ち入りや書類等の検査を行う場合があり、検査の受認、質問等への適切な回答が求められます。
一般的な古物品とは違い、買取・譲渡後の手続きや書類作成が必要になり、事細かい基準での管理が必要です。
また象牙に似た練り物や骨などを見極める鑑定力も必要になる為、取り扱いを始める事に高いハードルを感じる方も多い事でしょう。
今後、登録制になり登録免許税が9万円必要になってしまってからでは、より足踏みする要因にもなってしまうと思います。
そうならない為にも、無料で簡易的に手続きできる届出を行い、いつでも取り扱いできる状態にしておくべきだと思います。